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教育評論家の尾木直樹さんが昨年11月、参考人として呼ばれた衆院青少年問題特別委員会で問いかけた。
「プロフ(自己紹介サイト)をご存じの方は」
約20人の委員のうち、手を挙げたのはたった2人。
「ユーチューブ(動画投稿サイト)はどうです」
今度は、ぱらぱらと5人ほどが手を挙げた。
プロフは、フォーマットに従い血液型や職業、メールアドレスなどを打ち込むと、簡単に自己紹介でき、それをもとにネットで友達を作る。ユーチューブは、利用者が撮影したり集めたりした動画を登録し、他の利用者が興味のある動画を検索して楽しむ。いずれも「中・高校生に聞いて、知らない子はほとんどいない」(尾木さん)サイトだ。
尾木さんが指摘したのは、それが時にはいじめの舞台装置になることだ。個人情報の含まれるプロフは、いじめの対象となった子供の顔写真が張られ、出会い系サイトに「援助交際希望」などと転載される。ユーチューブでも、教室内でのいじめの様子が携帯電話で撮られて映像として流される。
だが、どんなものかも知らない国会議員には、対策の立てようもない。
深刻化するインターネットの犯罪やいじめに、政治が立ち往生している。
福田首相は今年1月、施政方針演説で「インターネットの有害情報の排除を強化する」と訴えた。それでも、政府の基本姿勢は民間の自主規制を促すにとどまる。「政府がネットを法律で規制したら、表現の自由や通信の秘密に抵触しかねない」(総務省)からだ。
実際に、ヤフーなどが2005年、自分の全裸画像などをホームページに掲載した男性にサービス停止を通告したところ、「表現の自由を侵害された」と男性から損害賠償訴訟を起こされた。昨年8月、東京地裁は判決で「写真は公序良俗に反する」と訴えを退けたが、男性は控訴中だ。
政府に代わり、与野党議員が違法・有害情報を規制する議員立法を目指すが、それもハードルは高い。
昨年12月の衆院青少年問題特別委員会。民主党の笹木竜三委員が児童ポルノを連想させる「未成年」などと銘打ったDVD販売サイト、拳銃取引を呼びかけるサイトなどの例を挙げ、取り締まりが可能かどうか、政府の見解をただした。
「犯罪を誘発するような情報でも、違法な情報ではないので捜査できない」「武器を売りますという情報自体、法律で規制されていない」
警察庁の片桐裕生活安全局長の苦しい答弁が続いた。
しかも、実際の取引では隠語が使われている。
「レンコンと豆を売ります。15万円」
一見何でもない野菜の売り買いに見えるが、実は、拳銃密売の隠語だ。回転式拳銃の弾倉に似ていることからレンコンは拳銃、マメは弾丸を意味する。だが、こうした言葉の使用を禁じることはできない。
「93」(クサ)は大麻、「鳥羽市」は架空名義などの「飛ばし携帯電話」……。様々な隠語で、法の網をくぐり抜けようとする。
何が違法・有害情報か、線引きは容易ではない。
内閣府が昨年秋に行った特別世論調査で、ネットの有害情報を「規制すべきだ」とした人は91%に上る。
ネットの規制は表現の自由とも絡む難しい問題だ。だからと言って、反社会的な行為などを野放しにしていいわけはない。実態を把握し、処方せんを書くことが政治に求められている。
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