焼き物の歴史

[焼き物は、人類にとって化学反応を利用した最初の生産物]土をこねて形を作り、火で焼くと、かたく水に溶けない物に変わる。

紀元前の遥か昔、世界各地で土器作りが広まった。

さらに硬く丈夫で美しい焼き物を求めて陶器や磁器が生まれ、釉薬（ゆうやく)をかけたり、彩色したりする技術が考案された。

 

焼き物は、主に二酸化珪素、酸化アルミニウム、アルカリ金属で構成されている。

形にして乾燥させた素地の粒子は、弱い力でくっつき合っているだけだ。

これを窯で焼くことで、元素の結合が繋ぎ直されて新しい物質に変わる。

この反応には[分解]と[硝子化]の二種類がある。分解では、原料の粘土鉱物が段階を経て新たな結合を生じ、最終的に元とは違った結晶に変わる。

窯の温度が上がると、各原料の一部が溶けて、液状のガラスができて素地全体を結合する。

ガラス化の度合いは陶器より磁器が大きい。

完全に溶けた釉薬はほぼガラス化した状態だ。

焼き物を飾る絵は、釉薬の下に描く場合と、上に描く場合がある。

酸化コバルトや酸化鉄など金属化合物で文様を描く[染め付け]や[鉄絵]は釉薬の下。

上に描くものが[色絵]だ。

一度焼いた陶磁器の釉薬の上に顔料で色鮮やかに描き、もう一度800度前後の低温で焼き付ける。

絵付けも含めて、焼き物の色は、すべて化学反応を利用したものだ。

 

例えば、澄んだ青緑~黄緑色美しい青磁には、1～2％の鉄分を含む釉薬を使う。

この釉薬を厚くかけて、酸素が不足気味の炎で焼くと、酸化第二鉄が酸化第一鉄になる。

（還元される)反応で青く発色する。

色の秘密は鉄です黒い地肌に金銀の斑紋が散り、水面に油が浮かぶような様から[油滴天目]と名付けられている焼き物の秘密も鉄だ。

こちらは、鉄分をたっぷり（5～8％）含んだ釉薬で焼く。

冷めるときにできる酸化第二鉄の結晶が[油滴]の正体だと考えられている。

鉄ひとつとっても焼き物の化学は複雑怪奇。

炎の偶然と経験を重ね、その技術は世界各地で発展してきた。

[原料を見つけて、正しい組み合わせにたどり着き、適切な窯の焚き方を会得した、昔の人の知恵の深さには驚嘆します]。

やがて科学技術の発達から安価な原料が開発され、大量生産が可能になった

 

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