ベアリング

古代エジプトのピラミッド建設では,石と地面の間で,木の棒の「コロ」を転がして石を運んだとされる｡摩擦を少なくすることで,重いものをわずかな力で動かす原理を機械に応用したのが，ベアリング（軸受け）だ。 ベアリングは,自動車や鉄道車両,工作機械,事務機器,パソコンなど多種多様な分野に使われている｡機械の内部にあるから見えないが,日本 ベアリング工業会によると,ほぼすべての機械の回転部分に使われており「産業のコメ」といっていい存在だ｡サイズも様々｡トンネル工事に使う切削機用など10㍍を超えるものからパソコンのハードデイスク駆動部用の数ミリ単位のものまで約2万種類の製品がある｡最も多いのは自動車向け用途で,製品受注の約4割を占める｡1台の乗用車につき,車軸部やトランスミッション部分など100ヵ所以上使われている。 ベアリングは大きく分けて2種類ある｡内輪と外輪の間に転動体と呼ばれる玉やコロがあり,それらが転がることでより軽く,滑らかに回転する「転がり軸受け」と転動体が無い「滑り軸受け」の2つだ。一般に ベアリングというと,転がり軸受けを指すことが多く,滑り軸受けよりも用途も多岐にわたる｡転がり軸受けで重要なのは,金属製の玉の表面の滑らかさだ｡摩擦を少なくするため,いかに凸凹をなくし,鏡のように滑らかに仕上げるかが品質の分かれ目｡現在では超精密な表面加工を施し,凸凹はｻﾌﾞﾐｸﾛﾝ（1万分の1ﾐﾘ）の範囲内で製品化できる｡同じ金属球のﾊﾟチンこ球と比べると,精密さが良く分かる｡もし,両方を地球の大きさまで拡大できれば,ﾊﾟチンこ球は富士山ほどの高さの凸凹が出来るが，ベアリングの凸凹は自由の女神ほどしかないという。｡近年は環境や宇宙,医療などより高度な技術が求められる分野でも需要が増えてきた｡風力発電の風車やﾛｹｯﾄのｴﾝｼﾞﾝ,CTｽｷｬﾅなど用途が広がり,ｴﾈﾙｷﾞｰﾛｽを抑制するｴｺ部品としても,その重要性は高まっている｡日本 ベアリング工業会によると,現在の ，ベアリングの原理や構造は中世にはすでに確立され,ﾚｵﾅﾙﾄﾞ・ﾀﾞﾋﾞﾝﾁが描いた ，ベアリングのﾃﾞｯｻﾝも残っているという。日本に初めて紹介されたのは1910年ごろ,第一次大戦で需要が増し,国産ﾒｰｶｰの設立が相次いだ｡37年東京ーﾛﾝﾄﾞﾝ間を当時の世界記録である94時間17分56秒で飛行した「神風」号の機体や発動機には,東洋 ベアリング「現ＮＴＮ｣の国産 ベアリングが使われ,日本の技術の高さを示した。

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